ワンデイインプラント®とAll-on-4(オールオンフォー)

インプラント治療にも、患者様の症状によっていくつかの治療法があります。
歯を1本失ったところに、1本のインプラントを埋めて歯の根の役割(人工歯根)とし、その上に人工歯を装着する、という治療法が一般的に多く行われているインプラント治療です。
ところがこの方法では、全ての歯を失っている人(総入れ歯の人)やほとんどの歯がグラグラしている人の場合には、インプラントが多数本必要となったり、骨を増やす骨造成という処置が必要だったりと、時間的にも経済的にも体力的にも、とても負担の大きい治療になります。ですから、インプラント治療を望んでいても、入れ歯で我慢せざるを得ない人が大勢いました。
このような人への負担を軽くして、当日もしくは早期に仮歯を固定するあご全体のインプラント治療が現在では多く行われています。この治療法には、根本となるコンセプトはほぼ同じながら、治療の術式(手術の手順など細かいルール)や使用するインプラントメーカーの製品名などによって、いくつかの異なる名称がつけられています。
よく似ている治療法なのに名称が違っているため、歯科医師の間でも混同している人もいるようです。患者様には大変わかりにくいことでしょう。
ここでは、それらのあご全体のインプラント治療法の中で、一番著名なAll-on-4と、当院が行っているワンデイインプラント®について、同じところや違うところを解説していきます。

目次

現在のインプラント治療の誕生まで

インプラントとは、体の様々な部位の治療のために、体内に埋め込まれる人工物のことを指します。たとえば、骨折をつなぐ金属プレートや人工内耳、人工の心臓弁、人工乳房など外科の分野で様々に使われています。口腔内で歯の欠損治療に行う歯科インプラントもその一つです。
歯科インプラントの歴史は古く、紀元数世紀頃の遺跡から歯の替わりに貝や動物の骨などが埋め込まれた頭骨が発掘されたという記録があります。古代から、歯を失って困っていた人類は、何とか噛めるようになろうと工夫していた跡が伺えます。
その後も石や金属など様々な材料や形のものが試されてきましたが、体内に埋め込まれたものを体は異物と判断し、うまく骨と結合しない例が多かったようです。
現在のインプラント治療ではそのような異物反応が起こらず、成功率が大変高くなっています(97~98%程度)。それは、チタンが骨と結合するという大発見のお陰です。
この発見は、1952年スウェーデンのブローネマルク教授によって偶然なされました。教授はこの発見を医学に生かすために様々に研究を重ね、チタンで人工の歯を再生させる歯科インプラント治療を開発、1965年に実際の患者様に手術を行いました。この患者様のインプラントは、2006年に亡くなるまで41年間機能し続けたそうです。

こうしてチタン製インプラントが安定して機能することが発表されてから、世界中に普及するようになりました。インプラント治療の成功率を高めるための研究も進み、あごの骨に埋め込んだ直後のインプラントには、強い力をかけない方が良いこともわかりました。ですから、インプラントを埋めた後、一旦歯ぐきを閉じ、3~6カ月待って骨と結合が確認できてから人工歯を装着するという2回法と呼ばれる術式が広まりました。
現在ももちろん、この方法が行われています。

あご全体のインプラント治療の誕生

しかし、全ての歯(ほとんどの歯)を失っている人にとって、3~6カ月も歯のない期間があることは、耐え難いことです。また、歯を1本1本再生させるために、インプラントを10~12本も埋める手術となると、非常に大掛かりで、体への負担(侵襲)も大きくなります。全ての歯を失った患者様にとっては、インプラントは取り組みにくい治療法でした。
このように多くの歯を失った患者様にも、手術や治療期間中のストレスをなるべく軽くしてインプラント治療を行えないか、という研究が行われ、

  • あご全体にバランスよく配置して埋められたインプラントが4本程度あれば、
    ひと塊となったあご全体の人工歯(12歯分)を支えることができる
  • 骨に埋められたインプラントは、強過ぎる外力には弱いが、程よい力であれば
    逆に骨結合が促進される

ということがわかりました。

これらの研究結果を踏まえて、全ての歯を失った人に、4~6本のインプラントをあご全体にバランスよく配置し、12歯分のひと塊の人工歯をその日のうちに装着するという治療法(※イミディエート治療と言います)が誕生しました。

※イミディエートとは「即時」という意味。インプラントの埋入と即時に仮歯を固定する治療法で、
 イミディエート・ローディング(即時荷重)とか、イミディエート・ファンクション(即時機能)と呼ばれます。

All-on-4(オールオンフォー)とは

こうして、イミディエート治療が発表されると、より安全性、確実性を求めて各インプラントメーカーや歯科医師はさらに研究を進めました。
中でも最も有名になったのが、Dr.マロが提唱したAll-on-4です。
これは、「4本のインプラント(上あごでは6本の場合もある)に、12本全て(All)の歯を載せる(on)」という治療法を端的に表した名前です。
All-on-4の際立った特徴には、奥歯の部分の骨が薄い場合、インプラントを斜めに埋めて骨造成はしない、というルールがあります。奥歯の部分のあごの骨は、上あごには上顎洞という空洞、下あごには下顎管という神経の走行があるため、もともとインプラントを垂直方向に埋めるだけの厚みが確保しづらくなっています。

従来であれば、インプラント治療の前に骨移植や骨造成という処置を行うことが考えられます。しかし歯科医師にとっては難易度が高く、患者様にとっては治療期間の長引く負担の大きい処置です。これを避ける解決策として、斜めに埋める(傾斜埋入)方法が編み出されたのです。とても画期的なアイデアで、これにより治療が可能となる患者様の幅が増えました。

All-on-4にはこのほかにも、ノーベル・バイオケア社の専用製品を使うなど細かいルールが決められており、歯科医師がそのルールをしっかりと学べば、あご全体のインプラント治療に取り組みやすいシステムになっています。世界的老舗のインプラントメーカーであるノーベル・バイオケア社の商品開発やセミナー開催などの働きもあり、歯科医師の間でもAll-on-4の名が普及し、あご全体のイミディエート治療の代名詞のような存在となりました。
多くの先生がAll-on-4を取り組むことで、多くの患者様が救われました。

ワンデイインプラント®とは

ただし、All-on-4には限界がありました。それは、極端にあごの骨が薄くなっている患者様の治療です。長年入れ歯を使用してきた患者様のあごの骨は、All-on-4の傾斜埋入では対応できないほど、薄く痩せている場合があります。特に上あごはもともと薄い構造をしているのに、一層薄くなることでAll-on-4治療が困難な症例が多々見受けられます。このような患者様はインプラント手術の半年~1年前に骨移植手術を受けておくか、インプラント治療を諦めるかのどちらかしかありませんでした。どちらにしても、患者様にとっては受け入れがたいことです。
「骨が薄くなってしまった人にも、イミディエート治療で噛む機能を取り戻してほしい。」そう考えた当院外科担当医の中平宏歯科医師は、インプラントの埋入手術と同時にサイナスリフト(上顎洞底挙上術)という骨造成術(人工骨や自家骨を使って骨を増やす処置)を行う治療法を考案しました。これであれば、骨造成からインプラントの埋入、仮歯の固定までを、1日(ワンデイ)で終えることができます。そこで中平宏歯科医師はこの治療法を「ワンデイインプラント®」と名づけ、他の治療法と区別するために、2006年に商標として登録しました。
またワンデイインプラント®️では、患者様の骨質や骨量の状態に応じてインプラントメーカーを選択したり、埋入するインプラントの本数も4~6本と幅を持たせたりと、患者様の症状に合わせて治療計画を柔軟に決めています。
ワンデイインプラント®は、サイナスリフトという処置とインプラント埋入を同時に行うため、高度な技術が必要です。また、手術前の治療計画の段階で、患者様の骨質を見極め、適した治療計画を立てる高い診断力も必要です。
インプラント治療に関する総合的な知識と技術が必要ですので、歯科医師の誰もが行えるというものではありません。難しい症例も含め様々なインプラント症例を行ってきたという、豊富な実績から培われた技術と知識が備わってこそ行える治療であり、個々の患者様に合わせたカスタムメイドな治療と言えます。

ワンデイインプラント®️とAll-on-4(オールオンフォー)の比較

ワンデイインプラント®️ All-on-4(オールオンフォー)
埋入本数 4〜6本 4本(上顎6本の場合もある)
骨造成 サイナスリフトの併用
(臼歯部でも固定できる)
骨造成なし
(遠心部インプラントの傾斜埋入)
初期固定値 低い初期固定値でも技術力でカバー 35〜45Ncm
使用メーカー 幅広く対応 ノーベル・バイオケア社

ワンデイインプラント®️の特徴

即時荷重治療法とサイナスリフトの併用

最大の特徴は「即時荷重治療法」と「サイナスリフト(骨の薄い箇所に人工骨や自家骨を移植して厚くする治療)」を併用することです。
歯を失うと歯槽骨の吸収が始まり、インプラントを埋めようにも骨が薄くて埋められない場合があります。そのような時サイナスリフト治療を行い骨を厚くしてインプラントを埋めることが可能です。ワンデイインプラント®は、骨吸収の著しい患者様や骨質の粗造 な患者様など様々な難症例に対しても、「抜歯、骨造成、骨整形、インプラント埋入、仮歯の固定」までの過程を、1 日(ワンデイ)で行っており、All-on-4の適用が難しい症例にも対応しています。

また、ワンデイインプラント®️は、安全、安心かつ効率よく治療を行えるよう、術中・術後はもちろん、人工歯などの補綴物まで厳密な基準を設けています。
医療面談に始まり、術後のメンテナンスまで含めたトータルな治療実施計画を設定し、患者様にも治療について理解と協力を得ることで多くの方々を成功に導いています。

中平グループだからできるワンデイインプラント®️

ワンデイインプラントは患者様個々の症例に応じて柔軟に対応するシステムを確立しております。従ってより豊富な経験と高い技術が求められます。高度な専門性が必要で、誰でも容易に取り組めるものではないので、現在、中平グループ、および中平Drの出向提携医院のみで行われています。
これは、長年インプラント治療の第一線で活躍してきた中平グループならではのノウハウがあってこそ実現できる物であり、ワンデイインプラント®️の成功率は一貫して高水準を維持しています。