GBT

GBTとは

GBTとはGuided Biofilm Therapy(誘導的バイオフィルム療法)の略で、口の中の細菌が作り出すバイオフィルムの除去を目的としています。
歯面清掃に特化した製品を製造しているスイスの歯科医療機器メーカーであるEMS(Electro Medical Systems)社が、GBTを提唱しています。

バイオフィルムとは

粘性のある細菌膜が「バイオフィルム」と呼ばれています。バイオフィルムはネバネバした分泌物で守られているため、抗生物質や殺菌剤なども効きにくくなります。そのため、バイオフィルムの中で歯周病細菌が活発になると、歯周病の発症や状態が悪化します。

従来のメンテナンスとGBTの違い

  • 従来のメンテナンス
    従来のメンテナンスは歯垢や歯石の除去を目的としており、スケーラーやルートプルーニングといった器具のほかに、機械式のブラシやラバーカップといったもので歯垢や歯石を擦り取る方法でした。それによって痛みを引き起こすことや、歯やかぶせ物に傷がつくこともありました。
  • GBT
    GBTでは、微粒子パウダーをジェット水流で吹き付けてバイオフィルムの除去を行うため、歯にとって優しい治療法となっています。また、研磨剤などを使用しておらず歯肉や歯にダメージを与えないため、体にも優しく痛みもほとんどありません。
    虫歯予防にも効果的で、矯正治療中の方や入れ歯をしている方、インプラントが入っている方など、様々な治療ケースに対応しています。

GBTのメリット

  1. 1.痛みを感じにくく、歯やかぶせ物に優しいメンテナンス
    ラバーカップやブラシ、スケーラーなどを使用した従来のクリーニングや歯石取りは、歯の表面やかぶせ物などを傷つける可能性がありました。しかし、GBTであれば歯の表面やかぶせ物、インプラントなどへのダメージを最小限に抑えることができます。さらに、痛みを感じにくい施術のため不快感が軽減されます。また、効率的にバイオフィルムを除去することができます。結果として歯やかぶせ物、インプラントなどを長く使うことができます。
  2. 2.バイオフィルムの可視化により、的確な処置が可能
    バイオフィルムはむし歯・歯周病・インプラント周囲炎といったお口の中の疾患以外にも、糖尿病や動脈硬化・心臓疾患、早産・低体重児出産のリスクを高めることや、高齢の方では誤嚥性肺炎の原因になることもあります。
    そんなあらゆる疾患と関わるバイオフィルムを染め出しにより可視化することで、見落とすことなく細部まで除去することに貢献します。バイオフィルムの除去後は歯石の付着も少なくなり、清潔な状態を保ちやすくなります。
    毎日のセルフケアに加えて、定期的にGBTで優しくバイオフィルムを除去することが、お口と全身の健康を守ることにつながります。
  3. 3.歯周ポケット内の細菌数を減少させる効果が高い
    従来の超音波スケーラーを使用したクリーニングでは、深くなってしまった歯周ポケットの中では器具が届かないため、細菌が多く残っていました。しかしGBTで用いるエアフローという器具を使用したクリーニングの直後では、歯周ポケットの中の細菌の数を大幅に減らすことができます。
    クリーニング後は、時間の経過とともに細菌の数は増加し、約1ヶ月後には元の数と同じ程度まで増えてしまう細菌もありますが、1ヶ月間隔で同じようにエアフローでのクリーニングを行うと、徐々に歯周ポケット内の細菌の数を減らすことができます。

GBTの目的

これまで一般的とされてきた予防処置は、歯への着色や歯石を除去することを目的としたものでした。しかし、近年の研究により虫歯や歯周病、インプラント周囲の炎症は表面に付着したバイオフィルムが引き起こす感染症だということがわかってきました。
GBTでは、バイオフィルムをしっかりと目に見える状態にすることで効率的に処置をします。

  • 健康な歯や組織の保全
    GBTでは、エナメル質・象牙質・セメント質などの歯を構成する組織や、歯茎などの柔らかい部分以外にも様々な歯周組織に対する侵襲性を抑えているため、なるべく傷つけず健康に維持していくことができます。
  • 虫歯の予防・早期発見
    虫歯の原因となるバイオフィルムを染め出すことにより、残さず除去することができます。また、細かい隙間も清掃できるため虫歯予防にもなり、虫歯があった場合でも早期に見つけることができます。GBTは、子供や成人の虫歯や歯周病を予防します。
  • 歯肉炎・歯周病の治療
    GBTでは歯と歯茎の境目などはもちろん、歯周ポケットの奥に隠れた歯根部分に付着したバイオフィルムや歯石も、歯面・歯肉・歯根へのダメージを抑えながら効果的に除去することができます。
  • 審美補綴物の保全
    審美的な補綴物にとって歯肉の退縮は大きなマイナス要因になるため、定期的にバイオフィルムを除去する必要があります。GBTではバイオフィルムの除去と同時に、ステインや着色汚れも優しく除去することができるため、美しさを保つことができます。
  • インプラントの維持
    GBTではインプラント表面や周囲組織へのダメージを抑えたバイオフィルム除去により、インプラントの大敵であるインプラント周囲炎を予防します。万が一炎症を起こしても、周辺組織の出血を抑えて歯石・バイオフィルムを除去します。
  • 矯正装置の維持
    歯ブラシの届きにくい矯正装置の隙間はバイオフィルムが増殖しやすく、ワイヤーの摩擦力の増幅や歯肉炎、虫歯の原因となります。GBTは細かい隙間も清掃できるため、歯や矯正装置を傷つけることなく安全にバイオフィルムを除去できます。

GBTの流れ

  • 口腔内状況の確認
    • 齲蝕、歯肉炎、歯周炎の有無など、歯や歯肉の状態を確認します。
    • 粘膜炎やインプラント周囲炎の有無など、インプラントの状態も確認します。
    • 洗口液を用いて洗口します。
  • 染出し
    • 染出しを行い、バイオフィルムを可視化します。
    • 染色によりバイオフィルム除去の目安となります。
    • バイオフィルムを除去することで、容易に歯石の検出ができるようになります。
  • 情報提供
    • お口の中の状態を説明し、予防の重要性について説明します。
    • セルフケアの質を高めるために、ブラッシング指導を行います。
    • 一人ひとりに合わせたメンテナンス方法を提案します。
  • 歯肉縁上・縁下のエアフロー
    • 歯肉縁上と歯肉縁下(歯周ポケットの中)4mmまでの、バイオフィルムや早期の軟らかい歯石、ステインを除去します。
    • 天然歯だけではなく、補綴物やインプラントにも同様の処置を行います。
  • 歯肉縁下のペリオフロー
    • 深い歯周ポケット(4mm〜9mm)内にあるバイオフィルムを、ペリオフローにて除去します。
    • インプラントを埋入されている方は、インプラント周囲溝からバイオフィルムを除去します。
  • 残った歯石の除去
    • エアフローを使用してバイオフィルムを除去した後、歯肉縁上・縁下に残存している歯石を徹底して除去していきます。
  • 最終確認
    • バイオフィルムや歯石の取り残しがないか確認します。
    • 虫歯がないかを確認し、フッ素を塗布して歯面を保護します。

定期的な検診をおすすめします

定期健診をおすすめするのは、予防に取り組むことにより虫歯や歯周病を事前に回避することです。もし発症した場合でも、定期検診の際に見つけることで早期に治療をすることができます。虫歯や歯周病は軽症のうちであれば簡単な治療で済みますが、悪化するほど時間やお金がかかります。
定期健診を受けることで、歯周病の重症化リスクを5分の1に減らすことができるという研究結果があります。歯周病は歯を失う一番の原因となっています。歯を失うと、食べ物が噛みにくくなるので軟らかい食べ物の量が増えるため、ご飯やうどんなどの炭水化物を食べる事が多くなり、糖尿病のリスクが高まります。また、食べ物の味は噛むことで濃くなるので、歯を失って噛めなくなると味がわかりにくくなります。そして、味の濃い料理を好んで食べるようになると、高血圧のリスクが高まります。高血圧になれば、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病による壊死のリスクも高くなります。その他にも、歯周病菌が出す毒素が血管を通じて全身に広がることもあり、心筋梗塞、糖尿病、パーキンソン病の原因になり得ることも明らかになっています。
結果として、定期健診を受けることで、これらの病気を予防することができるというのは大きなメリットとなります。これだけの病気のリスクを下げられるのだとすれば、トータルでみるとコスパが良くなります。